2012年3月16日金曜日

日本沈没第2部(上下) 小松左京+谷甲州


いわずと知れた、「日本沈没」の続編。
小松左京先生としては、まず発想として日本民族の世界彷徨の発想が先にあり
その前提として、日本が国土を失ってしまう「日本沈没」があったらしいので
あるが……
小松先生も歳を召されたと思う。チーム仕事としてプロジェクトを立ち上げて
自分では書かず、執筆は谷甲州が行っている。
だが……
これは、谷甲州の作品だと思うよ。
少なくとも、小松先生の作品じゃない。
世界中を放浪して歩き、海外青年協力隊でネパールに赴任、国際協力事業団プロジェクト調整員としてフィリピンへ行っていたりする。
そういった、経歴から今回の執筆がぴったりではあるのだが、ぴったり過ぎて谷甲州そのものの作品になってしまっている。
小松左京先生独特のダイナミズムがない。
ストーリーは大きく3つの部分に分かれている。
日本が国土をなくした大厄災からおよそ30年。
世界中に散らばる日本人たちは、オーストラリア北部にある亡命政府を中心にして、持ち前の勤勉性を発揮しその地域の発展に寄与しようとしていた。
だが、日本人の集団としての閉鎖性などその地域との軋轢も様々にあった。
また、内部的にも1世と2世の世代間解離もある。
1つのパーツはその中のニューギニアに植民したグループの話で治安の悪さや民族性の違いの中で苦労して農業を発展させていく植民基地のエピソード。
もうひとつのパーツは中田首相(彼は第一部にも登場してたよね。D計画の責任者として)がかつて日本があった位置に巨大な浮島を作って領土を回復(メガロフロート計画)しようとする話。
ただ、これは中国や周辺諸国の同意を得られず日本はアメリカに助けを求めてしまい、国際関係上、アメリカの罠にかかってしまう。
最後のパーツは、武装ゲリラと化してしまったカザフスタンの日本人植民の話。
ここのリーダーはなんとあの小野寺(1部に主役級で登場)、記憶を無くしていた。
また、国連難民高等弁務官として玲子が登場し最後には小野寺と再会する。
と、いうようなドラマがだらだらと続いていくのであるが……
何というかな、小松作品につきもののスペクタクルがないのである。
カザフスタンで異常気象により信じられない量の雪を短時間で降らしそれを、なんとか避けるというような筋立てはあるのだが、小粒すぎる。
話の取りまとめとして亡命政府は、「地球シミュレータ」という精密なコンピュータシミュレータを持っており、それによれば日本沈没時の火山灰が成層圏に大量に堆積して地球全体の太陽光線を減少させ地球が冷えていくことがシミュレートされていた。
アメリカは国家エゴとして、「地球シミュレータ」を独占しようとする。
まあ、様々な具がスープの中で煮立った状態だが、味のしまりが悪い感じである。
いろいろと緻密な調査はされているようである。
しかし、うまく調理仕切れなかった感が強い。

こんな話を考えてみた。

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様々な兆候があり、緻密な調査の結果日本列島は約10年後に日本海溝に引きずりこまれてしまうことが判明した。
時の首相は、海外に点在していた日本資産を最初は目立たぬように最後は露骨に引き上げた。
産業界は一丸となり、宇宙産業に投資した。
日本は独自に宇宙ステーションを打ち上げる。その規模は前代未聞の一万人級をモニュメントとして打ち上げるというのである。

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それは成功し、宇宙ステーション「日本」は、1万人の日本人を乗せて衛星軌道に乗る。
日本の国土への厄災は起こり、日本人たちは秩序を保ち、整然と非難する。
世界中に点在して暮すようになった日本人たち。
衛星軌道のぎりぎりのところを周回する人工衛星「日本」は世界中に散らばっていった日本人たちの本当の意味で「希望の星」だった。

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太陽系外から巨大彗星が地球との衝突軌道をとっていることが判明する。
様々な、対策が採られるが次々に失敗。
ギリギリのところで人工衛星「日本」が彗星の前に立ちふさがり衝突して
その軌道を変える。

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地球人はかつて地球という惑星に「日本」という国家があったことを
感謝するのであった。


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