2012年4月6日金曜日
人類以前人類以後 豊田有恒
前に読んだ豊田有恒先生の「甦る古代史」の姉妹編っていうかこちらの方が正式版。
「甦る古代史」は、先生があまり真面目に取り組んでいらっしゃらないような執筆だった。
「甦る古代史」と重なるようなテーマがたくさんあるが、こちらの方はキチンとまとめている。
編集者の違いなのかもしれない。
「人類以前人類以後」って題名は、当時話題になっていた「アフターマン」のもじりだと思われる。
人類以後のことは、最終章にほんのちょっとしか出ていない。読書時間としては15分程度で読み取れるものだ。
興味深いのは、地球の進化史に関するもの。
原始生命は今から30億年前に、細胞核がない単細胞生物として生まれた。
しかしそれから12億年の間、まったく進化がなかったのだ。
親から子へ遺伝子をコピーする状態が12億年も続いたのだ。
そして、突然真核細胞を持つ生物が生まれてきた。
この引き金を引いたのは何か。
豊田先生はここにSF的な発想を持ち出す。
露天しているウラン鉱石が臨界を超えて自然に核分裂を始め天然の原子炉となって、単細胞生物に突然変異を促して多細胞生物が生まれてきたと言うのだ。
うなづけるかどうかは別として、発想としては面白い。
次の発想。
これは、豊田先生の独自路線だが、二畳紀にはテラプシダ(哺乳類型爬虫類)の天下だった。
これは、胎生で恒温動物、体毛が生えている。哺乳類化の一歩手前の状態だった。
次の地質区分、三畳紀、ジュラ紀は哺乳類の時代になるはずだった。
しかし、意に反して恐竜類の時代になってしまった。
これも、大いなる謎である。
次の発想。
人類の話である。
ホモ・サピエンスは、猩猩(しょうじょう)いわゆる尾のない猿類から分派した。
猩猩は雑食性であるが基本的には果実食などの草食である。
木から降りた猿オーストラロピテクスは、サバンナに取り残され、肉食にならざるを得なかった。
つまり本来の食性から外れた、異端の霊長類である。
本来は、地上の覇者になれるわけはなかったのである。
エピソードとして出てくるのが、パラントロプス・ロプトウスという木から降りたがまだサバンナに適応していない、同種に近い霊長類を捕食していたということ。
獲物が取れずに、飢えていたときのみの行動らしいが、同種を捕食するという行動は異色らしい。
捕食動物の同種は、相手を捕食することはない。
ライオンは弱ったライオンを襲わない。
人類は、自然の摂理に逆らった動物なのだ。
クラークのSFではないが、人類は不完全なのだ。
この覇権が絶頂に達した時、人類は滅亡する運命にあると、警告して終わっている。
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